武術の平安

伝授を受けた方々の声をご紹介します。

受講者の声

No.1: 平安は「理詰め」で創り込まれた体系

東京都
須藤康彦
現代空手(和道会)二段(歴4年)、柔道二段(歴5年)、グローブ空手(歴5年)

 まず、大変素晴らしい勉強をさせていただいたことを、長谷川先生に御礼申し上げます。

 筆者は大学体育会で4年間、現代空手を修業しましたが、常に違和感を抱えていたのを覚えています。試合ルールに則った、身体の動かし方や駆引きの指導はありましたが、①強力な突き・蹴りを出す方法、②試合以外での戦い方(あんな限られたルール下での試合が空手の全てなのか?)、については一切無視されていました。長谷川先生から受講することによって、考えがクリアになりました。スポーツとしての試合に勝つことを目標に成立しているのが現代空手である旨、再認識できました。ありがとうございました。

 まず、①について指導がなかったのは、失伝のため指導できる先生が殆どいらっしゃらないことが理由だった訳ですね。尤も現代空手(スポーツ)は、武術とは発想も体系も異なるため、過激な「発力法」など、そもそも必要なかったという側面もあったのでしょう。なお、近代空手の「発力法」である「倒地法」については、中国拳法の震脚やジークンドーのストレートリードのような、比較的真似しやすい類似の技術体系が現存しているため、習得が容易だと筆者は考えておりましたが、軍隊教練を念頭に置いた技術体系であるのなら誰でも習得可能な発力法でなければ役に立たない訳ですね。テキストでのご指摘、大変に納得しました。ちなみに大学体育会での突き方の指導は、「脳天から尻の穴を貫く軸を意識して、とにかく腰を回転させろ。後は反復のみ。」の一点張りでした。真面目な部員ほど腰痛に苦しみ、身体を壊して休部・退部していったのを思い出します。こうなると俄然、古伝「発力法」である「当破」に興味が湧きます。勿論、そのメカニズムが開示されたとしても、自分の物にできるかどうか、は何とも言えませんが。

 戦場や修羅場での戦い方、振る舞い方として「形」を捉えた時、当然のことながら、スポーツとは相容れないことが理解できます。表演競技としての形演技は全く別物ですし、現代空手の組手競技を行うだけなら「形」を稽古する必要性は全くありません。既定ルールの試合に勝つことを一義に考える現代空手は、②は興味の対象外なのです。古伝のみならず近代空手の「形」の中に、戦場で敵を制圧するノウハウがこれほど詳細に保存してあり、かつ「発力法」とも平仄が合っていることは大きな驚きでした。脈々と受け継がれてきた実戦ノウハウが、初心者にも理解しやすいように糸洲先生の手で再構築されたのが近代空手ですが、これは、統一された理論により、全てが説明可能かつ矛盾のない一つの宇宙のようです。

 平安にしてもナイファンチ二段・三段にしても、受講テキストに沿って、想像力を働かせながら身体を動かす時、なんとも豊潤な技術体系があるものだ(技術自体は血生臭いものですが)と感心いたしました。近代空手の「形」と「倒地法」の整合性を感覚的に理解でき、長谷川先生もご指摘されているように、平安は「理詰め」で創り込まれた体系なのだ、と改めて実感できました。「当破」をベースとした古伝のナイファンチ、いかなるものであったか、真剣に見てみたい、可能なら自分自身で再現してみたい、とわが身を顧みず思う次第です。

No.2: 目から鱗が落ちるとはこのことか

Y.Y.
現代空手三段(歴7年)、合気系武道二段(歴4年)

 私も、長谷川先生と同様に、現代空手には色々と疑問がありました。しかし、誰に質問しても一向に埒があかず、自力でも答えが出せずにいたところ、幸運にも武術空手研究帳に出会いました。歴史上空手は三種類あったとのご指摘は新鮮でしたし、やっと答えが見つかるとの希望が持てました。そこで「武術の平安」をすぐに申し込み、テキストが届くや熟読しました。そして、目から鱗が落ちるとはこのことか、と思うほどの経験をしました。

 テキストは詳細を極め、非常に細かいところまで丁寧に解説されていました。一つの技にしても、そのメカニズムや掛けるときのポイントまで、余すところなく分析されているのには、正直驚きました。まるで、糸洲安恒に直接習ったのでは、と思うほどでした。

 ここでその詳細にはあえて触れませんが、平安という型は徹底的に「倒木法」の空手なのだ、ということに改めて気付かされました。長谷川先生が復元された平安は、その点でも極めて正確で、練武型や勝負形の全ての動作が「倒木法」で成り立っていることがはっきりとわかります。

 他にも驚いたことは沢山あるのですが、強いてあと一つをあげると、やはり「砕き」です。昔の空手家はこのようにして修行していたのですね。型をものにするとはこういうことだったのか、とようやく合点がいきました。(また、「裏の型」の稽古は「砕き」のためだった、というのも目から鱗の一つでした。)

 現在は主に平安・練武型(の表裏)の稽古をしていますが、「前方動作」を駆使した上級者用の動きが自在に出来るようになるまでには、かなりの時間がかかりそうです。しかし、どの方向を目指せばよいのか大方見えてきましたので、しっかりと稽古を継続していきたいと考えております。

No.3: 空手史に残る名著

北海道
O.N.
現代空手二段(歴5年) (他武道複数経験あり)

 「秘伝! 武術の平安」と「ナイファンチ二段・三段の秘密」の伝授を受けました。それぞれにつきいくつか感想を述べさせていただきます。

 「秘伝! 武術の平安」について:

 1)練武型の「練武線」が極めて正確なことに驚きました。今までこのように正確な練武線(一般には演武線と呼ばれていますが)は見たことがありません。これだけでも「秘伝! 武術の平安」は群を抜いています。(初段と四段では零点何歩まで表記してあるのにはびっくりしました。)

 2)体の型である平安二段ですが、揚げ受けや順突きを連続三回行う所で、二回目と三回目を一体的に行う意味がやっとわかりました。これは、現代空手家には絶対に解明不可能で、長谷川先生だからこそ解けたのだと思います。(その技術を使って追い突きをやってみたのですが、自分でも信じられない速さで正拳がすっとんでいき、生まれて初めて「肘にこたえる突き」というのを経験しました。やはり糸洲安恒が開発した倒木法の技術というのは、単に体を倒すという素人めいた単純なものではなかったこともわかりました。)

 3)「真の分解(勝負形)」では、まず、やっと本物の「受け技」に出会えました。(現代空手の受け技とは根本的に違いますね。)それから個々の技ですが、どれも実戦的で、敵が受けるダメージは相当なものと思います。しかし、中でも平安五段の「○○」はすごい必殺技です。こうなると、確かに、打突技と取手技のどちらに分類されるかわからなくなってきます。それと平安初段の最初の一手ですが、最近の分解解説では「敵の正拳上段突きを、我の後ろ手の上段揚げ受けで受ける」というのが定説になってますが、「それ、無理だろ」と思ってましたところ、長谷川先生の解説は定説とは違っており、非常に合理的で完全に納得がいきました。

 4)「砕き」の解説を読み、初めて本当の型稽古の意義が理解できました。確かに、武術の平安という型は、いたるところで「砕き」が出来るように作られており、まさに「砕き」のために作られた型なのだなぁと実感できました。(それと、チーシーがあのような目的で作られた鍛練具であった、というのも驚きでした。)

 「ナイファンチ二段・三段の秘密」について:

 1)この型が「対○○の型」というのに、まずハッとさせられました。言われてみれば、このようなカニの横歩きの型は、そういう特殊な目的で作られた型であるほうが、むしろ自然です。

 2)さらに、武術の平安とは違って、このナイファンチ二段・三段の「真の分解(勝負形)」には一定のルールが想定されている、という長谷川先生のご指摘にも、成程と納得しました。そして、だからこそ糸洲安恒は本気で○○との対決を考えていたこともよくわかります。(また、このことから、ナイファンチ二段・三段という型は、明治二十年代ごろに作成された型というのも明らかになります。)

 3)ナイファンチ二段の練武型は左右対称の型だから、第一挙動の掛け足立ちは変形であって、本当は閉足立ちが正しい、と思っていたのですが、それは間違いで、やはり掛け足立ちが正解であること、納得できました。(しかし、こんなに細かいことまでしっかりと解明されているのには、本当に驚きました。)

 以上、ほんのわずかですが、思ったことを書かせていただきました。

 今までにも、型の分解の本は読んできましたが、やっと本物に出会えたと感激しています。

 この二冊は空手史に残る名著と確信しています。出会えた幸運に感謝しています。

( * 上記の感想文は、都合により、一部の用語を伏字にしてあります。)


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